2025年における外国人に影響のある法改正のポイント
ここでは、2025年における外国人に影響のある法改正のポイントについてみていきましょう。
技能実習制度から「育成就労制度」への移行
「技能実習制度」は、実質的には労働力確保の手段として運用されてきた経緯があります。しかし、以下のような問題があったため、育成就労に移行することが決まっているのが現状です。
- 監理団体による不適切な管理
- 実習生への人権侵害
- 制度の形骸化
育成就労は簡潔にまとめると以下のような制度です。
- 従来の「国際貢献」から、「労働力確保」と「人材育成」に目的を変えた
- 技能実習では原則禁止されていた転籍(就労先の変更)が、一定条件下で可能。就労後1年が経過した場合などに限り、同一職種内での転籍が可能
- 受入企業は、外国人の技能向上に向けた「個別育成計画」を策定・実施しなければならない
- 3年間の育成就労を終えた外国人労働者は、「特定技能1号」への移行が円滑に図られるようになる。制度上、育成就労は「特定技能への前段階」となる
そのため、「外国人材を戦力として育成し、定着させる体制の整備」が求められるようになりました。
特定技能制度の運用見直し
2019年に導入された「特定技能制度」は、即戦力となる外国人材の受入れを可能にした制度ですが、受入企業や登録支援機関による届出義務や支援体制の煩雑さが課題となっていました。
そして、2025年の改正では、制度の実効性を高めつつ、企業側の負担軽減にも配慮した以下のような見直しが実施されています。
- 定期届出の頻度緩和:受入企業が義務付けられていた四半期ごとの「定期届出」が年1回へと緩和(ただし、計画変更や退職では、届出が必要であるため、実務における手続きは変わらない。3ヶ月に一度の定期面談は必須)
- 随時届出の対象拡大:支援計画の変更や就労の中断、遅延などに関する「随時届出」が新たに義務づけられた
- 地域連携の強化:自治体や業界団体との連携体制の整備が求められ、外国人材の地域定着を支援する仕組みが整えられた
- 登録支援機関の管理強化:虚偽の支援内容や報酬の不払いが見られる登録支援機関については、厳格な監督や登録取消処分が可能となった
企業からみれば、事務量が減ったものの、報告のタイミングと精度が厳しく問われるようになっています。
また、今後は共生施策にも注目する必要があるため、詳しく知りたい方は以下の記事を参照しましょう。
共生施策は気にする必要ある?自治体と企業による外国人との社会づくりとは
在留資格「特定技能」は省令改正で何が変わった?2025年施行の省令から読み解く
在留手続きの手数料改定
出入国在留管理庁が定める手数料について、2025年4月1日より見直しが行われ、以下のような改定が施行されました。
- 在留資格変更手数料
- 対面申請:4,000円 → 6,000円
- オンライン申請:4,000円 → 5,500円
- 在留期間更新手数料
- 対面申請:4,000円 → 6,000円
- オンライン申請:4,000円 → 5,500円
改定の背景には、「デジタル化推進」「業務処理の効率化」「財源確保」などが挙げられます。実質的に企業側の負担増となるため、とくに大規模な外国人雇用を行っている企業では、申請コストの見直しが必要となるでしょう。
加えて、今後さらに電子申請が優遇される可能性があるため、企業内の申請業務をDX化し、社内の在留資格管理フロー全体を見直す契機とすることが推奨されます。
法改正をふまえた採用・就労実務の対応で よくある質問(Q&A)
ここでは、実務者が迷いやすいポイントに焦点をあて、「何が変わったか」「どう対応すればよいか」を問答形式でみていきましょう。
Q1. 育成就労制度はいつから始まりますか?
A: 制度創設は2025年です。技能実習制度との並行運用を経て、完全移行は2027年4月が予定されています。
ただし、2025年6月の段階では、育成就労を選択肢として選べないため、移行を前提とした人材採用が重要です。
Q2. 特定技能の定期届出が年1回になったと聞きましたが、他に気をつけることは?
A: 緩和された一方で、就労開始の遅延や支援計画の変更、活動中断などの「随時届出」が強化されました。
そのため、正確かつタイムリーな情報管理が必要です。
そのため、これまでの手続きや実務負担が減少する訳ではありません。
3ヶ月に一度の定期面談は必須です。
Q3. 手数料の改定は、企業が負担すべきものですか?
A: 実際は、企業が代行申請を行う場合や福利厚生の一環として負担することがほとんどです。
Q4. 受入企業が策定する「個別育成計画」とは何を記載するものですか?
A: 育成の目標や技能到達段階、OJT/Off-JTの内容、評価方法などを含みます。
形式的な計画ではなく、実効性をもって運用されることが求められます。
採用・運用チェックリスト(2025年度版)
以下のチェック項目を確認することで、法改正を踏まえた実務整備状況を確認できます。自社の状況を確認してみましょう。
チェック項目 | 対応状況 | 備考 |
育成就労制度と技能実習制度の違いを理解している | □Yes □No | 制度の選択が必要な場面あり(平行して存在する期間がある) |
特定技能制度の改正内容を整理し、支援体制の見直しを行った | □Yes □No | 届出タイミング・対象に注意 |
在留資格変更・更新の手数料改定に対応済み | □Yes □No | 電子申請体制の整備も検討 |
外国人材向けの社内マニュアル(日本語・やさしい日本語)を整備 | □Yes □No | 離職・トラブル防止に有効 |
育成計画のテンプレートを社内で用意済み | □Yes □No | 法令上、策定義務あり |
登録支援機関の選定基準・契約書類を見直した | □Yes □No | 不適切支援による行政指導リスクあり |
行政・自治体との連携窓口を把握している | □Yes □No | 地域との共生施策が今後の焦点に |
2025年の外国人雇用の業界別動向
これまでの在留資格や法改正のポイントをふまえて、今後予想される業界動向をまとめました。
このとおりになるとは、限らないものの、どの業界でも企業の体制整備が求められているといえるでしょう。
業界 | 現状の受入体制 | 今後の展望 |
製造業 | - 技能実習・特定技能1号が中心- ライン作業・加工・組立業務が主軸 | - 育成就労制度への移行が進む- 自動化・AIとの共存を前提にした職域の再設計が課題 |
建設・インフラ | - 技能実習・特定技能の両制度を活用- 現場作業員の人材不足を外国人で補完 | - 特定技能2号による長期雇用が本格化- キャリア支援体制や安全教育の充実が求められる |
外食・宿泊 | - 特定技能や技能実習生の制度を活用- コロナ禍の影響から徐々に回復傾向 | - 言語支援とマルチリンガル体制の整備が急務- 地域定着と生活支援がカギ(自治体連携含む) |
介護 | - 特定技能・EPA・技能実習・介護ビザ、身分系の5ルートが併存- 現場の日本語力が課題 | - 国家資格取得支援(介護福祉士)を強化- 長期定着・昇進を前提とした育成モデルが進展 |
IT・専門職 | - 技術・人文知識・国際業務による受入が主流- 英語対応業務や開発職が中心 | - 高度人材ビザや特定活動ビザの活用が増加- リモート可の雇用や海外拠点との連携が加速 |
配送・物流 | - 2024年4月より特定技能1号に正式追加(トラック・バス・タクシー)- 技能実習制度での倉庫内軽作業や仕分け業務は従来から活用あり | - 特定技能による正規運転手雇用の拡大- 外国人ドライバーに対する運転免許取得支援・事故防止教育の体制整備が必須- 荷主や運送会社に対する労働時間・拘束管理が進む |
まとめ
2025年の法改正によって、外国人雇用制度は「短期労働力確保」から「人材育成と長期定着」への転換が加速しています。
各制度(育成就労・特定技能)の見直しに伴い、企業には法対応だけでなく、育成計画・共生支援といった実務体制の整備が求められます。
今後は業界ごとの動向を踏まえた制度選択と、社内の受入体制の強化が、競争力維持の鍵となるといえるでしょう。
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